Column

海外ワインメディア「People in Wine Magazine」に掲載されました

海外のワインメディア People in Wine Magazine(PIWM) にインタビューしていただきました。

今回お話を伺ってくださったのは、People in Wine Magazine 創設者・編集長の Sheelah Oguda

アフリカ・ケニアを拠点に、世界中のワインに携わる人々のストーリーを取材・発信しているジャーナリストです。

今回のインタビューでは、日本ワインそのものだけでなく、私がなぜ Winegrapher™ と名乗り、「ワインを通して、人・土地・文化・食・旅の物語を伝える」という活動を続けているのかについて、お話ししました。

一本のワインには、その土地の風土だけではなく、造り手の人生や地域の歴史、そしてそこに暮らす人々の想いが詰まっています。

私が記録したいのは、ワインそのものではありません。

ワインが人と人をつなぎ、地域と世界をつなぎ、新しい出会いを生み出す瞬間です。

だから私は、映像を撮り、文章を書き、世界へ向けて発信を続けています。

今回、アフリカのワインメディアから日本ワインに関心を持っていただき、このような機会をいただけたことは、日本ワインが少しずつ世界へ広がっていることを実感する、とても嬉しい出来事でした。

そして私自身にとっても、Winegrapher™という活動が世界にも伝わり始めていることを感じられた、大切な一歩になりました。

これからも、日本ワインと、その背景にある人・土地・文化の物語を、国内だけでなく世界へ向けても発信し続けていきたいと思います。

People in Wine Magazine(PIWM)とは

People in Wine Magazine は、世界各国のワイン業界で活躍する生産者、ソムリエ、ジャーナリスト、教育者、インポーターなど、「ワインに関わる人」に焦点を当てて、その活動やストーリーを発信する国際的なオンラインメディアです。

ワインそのものだけではなく、「人」を通してワイン文化を伝えることをコンセプトとしており、世界各地の多様な視点を紹介しています。

インタビュアー:Sheelah Oguda

今回インタビューしてくださった Sheelah Oguda さんは、People in Wine Magazine の創設者・編集長

ケニアを拠点に、世界各国のワイン文化や、その背景にある人々の物語を取材・発信しています。

近年は国際的なワインコミュニケーションの分野でも注目されており、「ワインを通して人を伝える」という姿勢に共感し、今回お声掛けいただきました。

私自身も、Sheelahさんとお話しする中で、「世界には同じ想いで活動している仲間がいる」と感じ、とても刺激を受ける時間となりました。

▼ 記事はこちら【Substackで記事を読む】

People in Wine Magazine

Beyond the Bottle:
How Norizo Kametani Is Documenting Japan's Wine Story

Winegrapher™という考え方、日本ワインの物語を記録する理由、 そしてワインを通して人・土地・文化を伝える活動について紹介されています。

Substackで記事を読む

記事は英語で掲載されていますが、Substackには翻訳機能があります。記事を開くと、画面上部(またはメニュー)に表示される「Translate(翻訳)」ボタンを押すことで、日本語で読むことができます。ぜひ翻訳機能を使って、日本語でもご覧ください。
また、Google ChromeやSafariなど、お使いのブラウザの翻訳機能をご利用いただくと、日本語でお読みいただけます。

People in Wine Magazine 掲載インタビュー(日本語版)

※本記事は、People in Wine Magazine に掲載されたインタビューの公式日本語版です。英語版の内容をもとに、日本語で読みやすく編集しています。

ボトルの向こうにある物語
NORIZOが記録する、日本ワインのストーリー

Winegrapher™という独自のスタイルを掲げ、日本ワインを支える人々や土地、文化を記録し続ける NORIZO。
映画監督であり、NihonWine.jpディレクターとして活動するNORIZOは、ワインそのものではなく、その背景にある「人の物語」を世界へ届けています。今回、People in Wine Magazineでは、日本人ワインコミュニケーターとして初めてNORIZOを特集。ストーリーテリング、文化の継承、そして日本ワインの未来について語っていただきました。


PIWM:
あなたはご自身を単なる映画監督ではなく、「Winegrapher™」と表現されています。この言葉はご自身で生み出されたものですが、いつ頃、「ドキュメンタリー映画監督」という肩書きだけでは、ご自身の活動を十分に表現できないと感じるようになったのでしょうか。

NORIZO:
2020年から、NihonWine.jpの取材で全国のワイナリーを訪れ、短い動画を制作するようになりました。活動を続けるうちに、短い映像では物語の一部しか伝えられないと感じるようになりました。もっと深く、その土地や人の想いまで伝えるには、ドキュメンタリー映画という表現が必要なのではないかと思ったのです。
当時の私は、自分を映画監督と呼べるとは思っていませんでした。映画を専門的に学んだこともありませんし、映画制作会社で働いた経験もありません。ただの映像クリエイターでした。一方で、ワインの知識があり、撮影も写真も編集も、一人で完結できました。その組み合わせこそ、自分にしかない強みだと気づいたのです。
そこで生まれたのが Winegrapher™ という言葉です。Wine(ワイン)、Videographer(映像作家)、Photographer(写真家)。特別な肩書きを作りたかったわけではありません。自分が実際に行っている活動を、一番正確に表現できる言葉がこれだったのです。
現在は2本のドキュメンタリー映画を完成させ、映画監督と名乗ることにも自信を持てるようになりました。それでも、私の原点を最もよく表しているのは、やはり Winegrapher™ という肩書きだと思っています。

PIWM:
あなたの作品は、単なるワインのドキュメンタリーという印象ではありません。そこには人がいて、風景があり、職人の技があり、受け継がれてきた文化があります。そして、ワインはそれらを結びつける一本の糸のような存在として描かれています。これは最初から目指していた表現だったのでしょうか。それとも、取材を続ける中で自然にそう変化していったのでしょうか。

NORIZO:
いいえ、最初からそう考えていたわけではありません。当初の目的は、とにかくもっと多くの人に日本ワインを知ってもらうこと。それだけでした。しかし、全国のワイナリーを訪ね歩くうちに、本当に興味深いのはワインそのものではなく、その背景にある人々や歴史、文化なのだと気づいたのです。
一本のワインには、必ず物語があります。そこには造り手の人生があり、その土地の風景があり、食文化があり、さらには次の世代へ託す想いまで映し出されています。だから今では、私はワインを主役だとは考えていません。
ワインとは、人と土地、文化をつなぐ一本の糸のような存在なのです。
私が本当に記録したいのは、ワインそのものではなく、そのワインの向こう側にある物語です。


PIWM:
ワインの世界に入る前は、繊維業界やファッション業界、そしてヘルスケア業界でもキャリアを積まれていました。振り返ってみて、それらの経験は、現在のストーリーテリングにも影響を与えているのでしょうか。

NORIZO:
はい、もちろんです。ファッション業界では、美しさや価値をどのように伝えるかを学びました。ヘルスケア業界では、人々の暮らしをより良くするための情報を、どのように分かりやすく伝えるかを学びました。振り返ってみると、どちらの仕事にも共通していたのは、「伝えること」でした。
現在、私の表現手段は映画へと変わりました。しかし、目指していることは昔から変わっていません。
人の心に届き、誰かの行動や気持ちを少しでも動かす物語を伝えることです。

PIWM:
ドキュメンタリーでは、企画・調査・インタビュー・撮影・編集・字幕・翻訳まで、すべてをご自身で手掛けられています。通常であれば、多くのスタッフが関わる工程ですが、一人で作品を作り続けることで、ストーリーテリングやご自身について、どのようなことを学ばれましたか。

NORIZO:
ドキュメンタリー制作において、一人で取り組むことは決して効率の良い方法ではありません。それでも、このスタイルだからこそ、最初に思い描いたビジョンを最後までぶらさずに貫くことができます。
誰かに自分の意図を説明したり、解釈を委ねたりする必要がありません。作品全体を、自分自身の感覚で一貫して形にすることができます。
そして、ストーリーテリングについて学んだ最も大きなことは、「美しい映像」が最も大切なのではないということです。本当に大切なのは、人の心を動かすことです。
また、自分自身について気づいたこともあります。
私は、美しく完璧な映像を作りたいから映画を撮っているのではありません。
伝えたい物語があるから、映画を撮っているのです。


PIWM:
日本ワインは、まだ世界では十分に知られている存在とは言えません。長年にわたって海外へ発信を続けてきた今、世界の人々は日本ワインについて、どのような誤解をしていると感じていますか。

NORIZO:
多くの人は、今でも日本ワインをボルドーやナパ・ヴァレーのような有名産地と比較しようとします。しかし、私は日本ワインは他国と比較されるものではなく、一つの独立したカテゴリーとして理解されるべきだと考えています。
日本は伝統的なワイン生産国ではありません。降水量が多く、夏は高温多湿で、さらに台風もあります。ワイン用ブドウを栽培するには、とても厳しい自然環境です。それでも、日本には情熱を持った生産者が数多くいて、素晴らしいブドウを育て、美しいワインを造り続けています。さらに、日本は南北に長く伸びた国です。地域ごとに気候も風土も文化も異なるため、「日本ワインはこういう味」という一つのスタイルは存在しません。私は、その多様性こそが日本ワイン最大の魅力だと思っています。
世界中の人たちが、日本ワインを他国と比較するのではなく、日本ならではの個性として楽しんでくれるようになれば、とても嬉しいですね。


PIWM:
NihonWine.jpのディレクターとして日本ワインを世界へ発信する一方で、独立したストーリーテラーとしても活動されています。
日本ワインを応援する立場と、客観的な視点で物語を伝える立場。その二つをどのように両立させているのでしょうか。

NORIZO:
私は、「日本ワインは素晴らしい」と言葉で伝えることでプロモーションをしたいとは思っていません。
私の役割は、人々が自ら日本ワインを発見するきっかけをつくることだと考えています。
そのため、映画やコラムの中では、できるだけ自分の意見を前面に出さないよう心掛けています。代わりに、生産者自身に語ってもらい、風景にも物語を語ってもらう。
私は、見る人に「こう考えてください」と伝えたいのではありません。物語を体験し、それぞれが自分自身の答えを見つけてほしいのです。
私の映画を観たり、記事を読んだりした人が、「いつか日本へ行ってみたい。」そう思ってくれたら、とても嬉しいですね。そして実際に日本を訪れたとき、日本酒だけでなく、日本ワインにも出会ってほしいと思っています。
もし私の映画やコラムが、ほんの数人でも「日本ワインを飲んでみたい」「現地へ行ってみたい」と思うきっかけになれたなら、それだけで私は自分の役割を果たせたと思います。


PIWM:
これまで、イザベル・レジェロンMWやリーズ・チョイ氏をはじめ、世界の第一線で活躍するワインのプロフェッショナルたちにインタビューを重ねてこられました。その中で、ワインに対する考え方が大きく変わるような出会いや会話はありましたか。

NORIZO:
先ほどもお話ししましたが、私は自分自身をワインの専門家だとは思っていません。リーズ・チョイ氏やイザベル・レジェロンMWのような世界トップレベルのプロフェッショナルとお会いするたびに、その思いはますます強くなります。彼らは何十年という歳月をかけてワインを学び、その道を極めてきました。私は、そうした方々を心から尊敬しています。
一方で、その方々と接する中で気づいたことがあります。それは、私が同じ道を歩む必要はないということです。
ワインについて詳しく説明できる人は、世界中にたくさんいます。でも、ワインの背景にある人や土地、文化、歴史の物語を伝えられる人は、それほど多くありません。私ができることは、まさにそこです。私は、そうした物語こそが、人々にワインをより深く、より豊かに理解してもらうための入り口になると信じています。
それが、私のワインに対する考え方が最も大きく変わった瞬間でした。


PIWM:
Vinexpo Asiaでは、メディアとして取材するだけでなく、日本のワイナリーと海外のバイヤーや輸入業者、ワイン関係者をつなぐ役割も担われています。そうした経験を通して、ワイン産地の国際的な評価を高めるうえで、ストーリーテリングにはどのような役割があると感じていますか。

NORIZO:
まず何よりも大切なのは、ワインそのものの品質です。世界のワイン市場では、品質がすべての出発点になります。しかし、本当に素晴らしいワインに出会うと、人は自然と興味を持ちます。
「なぜこんなに美味しいのだろう。」
「誰が造ったのだろう。」
「どんな土地で生まれたのだろう。」
そうした好奇心が生まれた瞬間から、ストーリーが始まるのです。
私の考えでは、品質は人を惹きつけます。そして、その土地や生産者との長く深いつながりを生み出すのが、ストーリーテリングです。


PIWM:
もし20年後に誰かが『Vin Japonais』を観たとしたら、ワインそのものだけではなく、日本という国について、どのようなことを感じ取ってほしいと願っていますか。

NORIZO:
20年後、日本ワインがどのような姿になっているのかは誰にも分かりません。
気候変動によって、栽培されるブドウ品種や、造られるワインのスタイルも変わっているかもしれません。それでも、この映画には、決して変わらないものを残しておきたいと思っています。それは、日本でワイン造りに人生を捧げてきた人々の情熱と、この時代を生きた人たちの想いです。
近代日本ワインは1877年に始まりました。2027年には150周年を迎えます。そして20年後には、その歴史は170年になります。
そのとき『Vin Japonais』が、単なるワイン映画ではなく、日本ワインの歴史を伝えるひとつの記録として残っていてくれたら、とても嬉しく思います。


PIWM:
People in Wine Magazineでは、毎回ゲストの皆さんに、次回のインタビューゲストへの質問を残していただいています。前回のゲスト、Samuel Ndichuさんから、あなたへの質問はこちらでした。「20年後、あなたはどのような人物として人々の記憶に残っていたいですか。」

NORIZO:
正直に言うと、20年後には私は73歳になっています。そのときも健康で、美味しいワインを楽しめていたら、それだけで十分幸せだと思います。私はこれまで、自分の名前を残したいとか、人々の記憶に残りたいと考えたことはありません。
ただ、一つだけ願っていることがあります。それは、私が残した映画やYouTube、そして記事が、そのときもどこかに残っていることです。もし、私が伝えた物語を読んだり観たりした誰かが、「今日はワインを一杯飲んでみようかな。」そう思ってくれたなら、それ以上に嬉しいことはありません。私自身を覚えていてもらう必要はありません。
私が残した一つの物語が、誰かの次の一杯につながる。それだけで十分です。


PIWM:
最後に、People in Wine Magazineで次に特集する方へ、一つ質問を残してください。

NORIZO:
ぜひ、お聞きしたいことがあります。
「あなたがワインの世界に入ることになった、きっかけの物語を教えてください。」
私は、すべてのボトルには物語があり、そしてワインに関わるすべての人にも、それぞれの物語があると信じています。


編集後記
NORIZOの活動は、多くの人に「ワインとは、ボトルの中にあるものだけではない」ということを思い出させてくれます。ヴィンテージが忘れられ、ラベルが店頭から姿を消したあとも、人は残り、土地は残り、文化や伝統は受け継がれていきます。

その物語を記録し、未来へ残していくこと。

それが、NORIZOが静かに、そして一貫して続けてきた仕事です。彼が記録しているのは、日本ワインそのものではありません。日本ワインという文化を築き、育て、未来へつないでいく「人々」の物語です。
2027年、日本ワインは近代ワイン醸造150周年という大きな節目を迎えます。NORIZOが残す映画、写真、そして数々の物語は、単なる業界の記録を超え、日本ワイン文化そのものの歴史を伝える貴重なアーカイブとなっていくことでしょう。

People in Wine Magazineは、優れたワイン産地には優れたワインメーカーだけでなく、その物語を伝えるストーリーテラーの存在も欠かせないと考えています。
日本人ワインコミュニケーターとして初めて迎えた今回のゲストが、その物語を未来へ伝え続けるNORIZOであったことを、大変光栄に思います。

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