ワインと食で、地域を綴る。

NORIZO WINE

ゲストスピーカーとして登壇:島根県取材費用助成金説明会

ワインで語る、島根の物語

先日、島根県主催の「取材費用助成金説明会」にて、ゲストスピーカーとして登壇の機会をいただきました。
テーマは「ワインを切り口にした地域発信」。
映像と食、そして“語り”の力で、どのように島根の魅力を伝えられるかをお話ししました。


西から東へ、島根をワインで旅する

プレゼンでは、島根を「石見」「出雲」「奥出雲」という三つのエリアに分け、それぞれの自然や文化、食材とワインの関係性を紹介しました

島根は東西に180Kmの横長の土地で、西と東でまったく異なる顔を持っています。
石見には銀山と海の恵み、出雲には神話と和の文化、そして奥出雲には山の恵みとたたらの記憶。

その風土の違いこそが、ワインをはじめとする食の多様性を生みしています。


石見 ― 銀山と海の恵みの国

旅の始まりは西の玄関口・石見。清流・高津川と浜田漁港、そして世界遺産・石見銀山。

この地では、火山性土壌の個性を生かす「石見ワイナリー」が象徴的な存在です。
たとえば北天の雫のオレンジワインには、浜田の名物・のどぐろの炙りを。果皮由来のほろ苦さと、魚の脂の甘みが美しく響き合います。
同じく神紅の赤は、清流の鮎の塩焼きと好相性。瑞々しい果実味が塩味を受けとめ、食卓に“清流の余韻”を残してくれます。

石見は、銀山の記憶と海の恵み、そして新しいワイン文化が交わる地。伝統と革新の交差点に、未来のテロワールが息づいています。



奥出雲 ― 山の恵みと鉄の国

山を越えると、深い森と清流に抱かれた奥出雲へ。

たたら製鉄で知られるこの地には、古代から「自然と人の営みが一体化した文化」が根付いています。

ここにある「奥出雲葡萄園」の小公子は、まさに山の力を映すワイン。

炭火で焼いた奥出雲和牛と合わせれば、果実味とタンニンが赤身の甘みを包み込み、静かな余韻が広がります。
また、山菜の天ぷらや木次乳業の熟成チーズには、酸とミネラルが澄んだシャルドネが寄り添う。
山の時間そのものが、杯の中に流れ込むようです。

奥出雲は「力強さと静けさが共存する土地」。
このバランス感覚こそが、今の時代に通じる“地方の美”ではないかと感じています。


出雲・松江 ― 神話と和の文化の都

そして東へ。
出雲大社を中心とする神話の国・出雲、そして茶の湯文化が息づく城下町・松江。
ここには「縁を結ぶ」食と文化が息づいています。

出雲そばには、島根ワイナリーの甲州を。清らかな酸がそばの香りを引き立て、軽やかな調和が生まれます。
あご野焼きには柚子胡椒を添えて、やや冷やした甲州を。キレのある酸が、魚の旨味と塩味を支えます。
さらに、出雲ぜんざいにはマスカット・ベーリーA。赤ワインのやわらかな果実味が小豆の甘さに溶け合い、伝統とモダンが交わる余韻を描きます。
松江の三大銘菓「若草・山川・菜種の里」には、再び甲州を。和菓子の繊細な甘みを壊さず、茶の湯とワインの新しい調和を感じさせます。

出雲と松江は、まさに「神話と和の文化の融合」。
ここでもワインは“語り”の道具として、土地の歴史を現代へとつないでいきます。



しまねを“語る”ことは、未来をつくること

今回の登壇では、単なる観光PRではなく、「語りと味わいによる地域デザイン」という視点をお伝えしました。
ワインは飲み物ではなく、風土を“翻訳”するメディアです。

だからこそ、地域を語るときにワインを置くと、人・土地・文化の関係性が立体的に見えてくる。

私自身、映画や映像を通じて島根を表現してきましたが、これからは「味覚を伴う物語」として、さらに広げていきたいと考えています。

行政や企業、観光施設の垣根を越えて、“ワインと食で、地域を綴るストーリーテラー”としての役割を果たしていくこと。
それが、私がワインを通じて島根を発信する理由です。

島根は決して派手ではありません。

でも、静けさの中にある深みと余韻――それが、この土地の魅力。
映像でも、食でも、言葉でも。

その“静けさの輝き”を、これからも丁寧に綴っていきます。